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好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎とは?

好酸球性副鼻腔炎は慢性副鼻腔炎の一種で、両側の鼻腔内に複数の鼻茸(ポリープ)が形成されることが特徴の、難治性の疾患です。嗅覚障害、ねばつく鼻水、強い鼻づまりなどの症状を伴います。

  • 再発しやすく治療が難しいタイプであるため、2015年より特定疾患(難病)に指定されています
  • 一般的な慢性副鼻腔炎と比べ、抗菌薬治療や内視鏡手術のみでは十分な効果が得られないことがあります
  • ステロイドの内服中は症状が改善することが多い一方で、中止すると再発しやすいという特徴があります

好酸球性副鼻腔炎の症状は?

好酸球性副鼻腔炎の症状は?好酸球性副鼻腔炎では、嗅覚障害(においが分かりにくくなる)や強い鼻づまりが代表的な症状としてみられます。鼻水は粘り気が強く、黄色〜緑色の膿性になる傾向があり、鼻の奥から喉へ鼻水が流れ落ちる後鼻漏を伴うこともあります。また、感染を伴う場合には、頭痛・頭重感、頬や目の奥の痛みが生じることがあります。
さらに、気管支喘息を合併している場合には、喘息に関連した咳や息苦しさがみられることがあります。好酸球性中耳炎を併発すると、耳が聞こえにくくなるなどの症状が現れることもあります。好酸球性副鼻腔炎は、単なる「鼻の病気」にとどまらず、生活の質(QOL)や全身の健康に大きな影響を及ぼす疾患です。その疾病負荷は、主に以下の点に集約されます。

① 日常生活への影響

  • 強い鼻づまりや嗅覚障害により、食事の楽しみが低下する
  • においが分からないことで、ガス漏れや焦げ臭さに気づきにくくなるなど、安全面への影響
  • 後鼻漏や慢性的な咳により、会話や仕事に支障をきたすことがある

② 睡眠の質・精神面への影響

  • 鼻閉による睡眠障害やいびき
  • 慢性的な不調による疲労感や集中力の低下
  • 症状が長期に改善しにくいことから、不安感や抑うつ傾向を伴う場合もあります

③ 再発を繰り返すことによる治療負担

  • 手術を行っても再発しやすく、長期にわたる通院・治療が必要
  • ステロイド内服が有効である一方、長期使用による副作用への懸念
  • 症状の再燃と寛解を繰り返すことで、身体的・心理的負担が大きくなる

④ 喘息など全身疾患との関連

  • 多くの患者さんで気管支喘息を合併

鼻と気道が連動する「one airway, one disease」の考え方から、副鼻腔炎の悪化が喘息症状を悪化させることがあります。


好酸球性副鼻腔炎の原因は?

好酸球性副鼻腔炎の発症メカニズムは、現在のところ完全には解明されていませんが、免疫系の異常が深く関与していると考えられています。
特に、好酸球と呼ばれる白血球が過剰に反応し、鼻や副鼻腔の粘膜に慢性的な炎症を引き起こすことが、発症や再発に関与しているとされています。

1. 免疫系の過剰反応

体内で好酸球が過剰に産生・活性化されることで、B細胞のクラススイッチが起こり、IgEが産生されます。
その結果、

  • 副鼻腔粘膜のバリア機能の破綻
  • 杯細胞の過形成による過剰な粘液産生
  • フィブリン網の過剰形成による鼻茸(ポリープ)の形成

などが生じ、副鼻腔粘膜に慢性的な炎症が引き起こされると考えられています。
このような病態の背景には免疫反応の異常があり、好酸球性副鼻腔炎はアレルギー反応の一環として発症するケースもあります。そのため、細菌感染時に用いられる抗菌薬は効果が乏しいことが多く、一方でステロイド治療や生物学的製剤による治療が高い効果を示すことが知られています。

2. アレルギーや喘息との関連

気管支喘息をお持ちの方や、アスピリン不耐症(バファリン、ロキソニン、ボルタレンなどの解熱鎮痛薬に対する過敏反応・薬剤アレルギー)のある方では、約半数に好酸球性副鼻腔炎を合併していると報告されています。
また、アトピー体質の方にも比較的多く認められることが知られています。

治らない気管支喘息

3. 遺伝的要因・地域的要因

アレルギー疾患や気管支喘息の既往がある方に多くみられるほか、欧米や都市部での発症頻度が高いことが報告されており、地域や生活環境によって発症リスクが異なると考えられています。

4. 環境因子

大気汚染や喫煙、花粉・カビ・ダニといったアレルゲン、ウイルス、黄色ブドウ球菌などの細菌、さらに各種タンパク分解酵素(プロテアーゼ)に対する過敏な免疫反応が、発症の引き金となる場合があります。


好酸球性副鼻腔炎の
検査・診断方法は?

診断は、複数の検査結果を総合的に評価して行います。まず、鼻内視鏡検査により鼻腔内を詳しく観察し、鼻茸(ポリープ)の有無、さらに存在する場合は片側性か両側性かを確認します。併せて血液検査を行い、末梢血中の好酸球の割合(%)および絶対数を測定します。
次に、副鼻腔CT検査によって炎症の広がりや篩骨洞を中心とした病変の分布を評価し、JESRECスコアと呼ばれる診断基準を用いて判定します。JESRECスコアは、

  • 鼻茸の有無
  • 病変の両側性
  • CTにおける炎症陰影の分布
  • 末梢血好酸球割合

の4項目から構成され、17点満点中11点以上の場合、好酸球性副鼻腔炎が強く疑われます。

最終的な確定診断は、手術などで採取した鼻茸の病理組織検査によって行います。顕微鏡下で観察し、1視野あたり70個以上の好酸球が確認されることで、好酸球性副鼻腔炎と診断されます。


好酸球副鼻腔炎の治療方法は?

治療はまず薬物療法から開始します。主にマクロライド系抗菌薬の少量長期投与と抗ロイコトリエン薬を基本とし、症状に応じて抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬を併用します。嗅覚障害、鼻水、鼻づまりなどの症状が強く、日常生活に支障をきたす場合には、必要に応じて短期間のステロイド内服を行うこともあります。
薬物療法で十分な改善が得られない場合は、内視鏡下鼻・副鼻腔手術を検討します。好酸球性副鼻腔炎は、十分な手術と適切な術後治療を行っても再発しやすい特性を持っています。そのため、治療後もうがい・手洗い・マスク着用などの感染予防に加え、日常的な鼻洗浄などのセルフケアを継続することが、良好な状態を維持するために重要です。
近年では、「生物学的製剤」を用いた新しい治療法も登場しています。これは、炎症に関与する特定の分子の働きを抑える治療で、次のような方が対象となります。

  • 内視鏡下鼻・副鼻腔手術後も鼻茸が再発している方
  • 既存の薬物療法で十分な効果が得られない方
  • 全身麻酔手術が困難と判断された方
  • ステロイドの使用回数が多く、副作用のリスクがある方

これらの条件を満たし、生物学的製剤の最適使用推奨ガイドラインに適合する場合には、本治療を選択肢の一つとして検討します。

手術

好酸球性副鼻腔炎は、

  • 鼻ポリープが繰り返しできる
  • ねばねばした鼻水が続く
  • 強い鼻づまりや、においが分からなくなる(嗅覚障害)

といった症状が長く続きやすい病気です。内服薬や点鼻薬などの薬物療法だけでは十分な改善が得られない場合には、内視鏡下鼻・副鼻腔手術が有効な治療選択肢となります。

手術の方法

手術は、鼻の中から内視鏡を入れて行う低侵襲な手術です。高画質モニターで副鼻腔の奥まで確認しながら、マイクロデブリッターと呼ばれる専用の器具を用いて、

  • 鼻の入り口から奥にかけて広がった鼻ポリープ
  • 炎症を起こした病的な粘膜
  • 好酸球性副鼻腔炎に特徴的なねばねばした鼻水(ムチン)

を、鼻腔だけでなく副鼻腔内まで丁寧に取り除きます。

再発を抑えるための工夫

必要に応じて鉗子やドリルを使用し、副鼻腔と鼻腔の通り道を広げる処置を行います。これにより、副鼻腔内の換気や分泌物の排出がスムーズになり、炎症が起こりにくい環境を整えます。さらに、副鼻腔内の隔壁を滑らかに整え、副鼻腔を「単洞化」することで、術後の再発リスクを軽減します。

手術の目的

好酸球性副鼻腔炎の手術は、「すべてを取り切る」ことが目的ではなく、薬が効きやすい状態をつくり、症状をコントロールしやすくすることが大切なポイントです。手術と術後の適切な薬物療法を組み合わせることで、鼻づまりや嗅覚障害の改善、生活の質(QOL)の向上が期待できます。

術後の管理

手術後は、鼻・副鼻腔内の洗浄を行いながら、症状や体質に応じて以下の薬を併用して経過を観察します。

  • 抗ロイコトリエン薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • 必要に応じてステロイド点鼻・内服

副鼻腔が鼻腔と広く繋がった状態になるため、万が一ポリープが再発しても、軽度であれば外来での処置や薬物療法でコントロール可能です。これにより、患者さんの負担を最小限に抑えることができます。

生物学的製剤

対象となる方

  • 内視鏡下鼻・副鼻腔手術後に鼻ポリープ(鼻茸)が再発し鼻汁、鼻閉が続く方
  • 全身麻酔下手術に耐えられないお身体の状態でステロイド内服でも十分な改善が得られない難治性の好酸球性副鼻腔炎の方

当院で使用している薬剤は以下になります。

デュピルマブ(デュピクセント®)

  1. デュピルマブの働き

デュピルマブは、好酸球性副鼻腔炎の炎症に関わる IL-4・IL-13 というサイトカインの作用を抑える注射薬です。

主な効果
  • 好酸球の増殖・副鼻腔への侵入を防ぐ
  • 副鼻腔粘膜のバリア機能を維持
  • B細胞によるIgE産生を抑制
  • 杯細胞の過形成を抑え、粘液の過剰分泌を防ぐ
  • 過剰なフィブリン網の形成を抑え、鼻ポリープの縮小し新生を防ぐ

これにより、鼻づまりや嗅覚障害の改善、再発リスクの低下が期待されます。

  1. 治療方法
  2. 初回・2回目
    • 医師または看護師による皮下注射
    • 注射方法、消毒、廃棄方法など自己注射の指導を行います
    • 不安な方はリカバリー室で30分ほど経過観察可能
    3回目以降 基本的に自己注射に切り替えます
【投与頻度】

月2回の皮下注射、安定した場合月1回も可能な場合があります

  1. 費用について
  • 薬剤1本:約6万円(1か月2本投与が基本)
  • 自己負担3割の場合は治療費が高額になりやすい
  • 指定難病(好酸球性副鼻腔炎)認定患者
  • 医療費助成により自己負担:5,000円〜2万円程度
  • 長期・高額の場合は自己負担額のさらなる軽減も可能
  • 難病指定がなくても高額療養費制度で自己負担を抑えられる場合が
  1. 当院での対応
  • デュピルマブ導入相談の受付
  • デュピルマブ自己注射の指導
  • 浜松医療センターや他院で治療中の方の継続処方
  • 治療効果判定あるいは副作用や併発疾患早期発見のための定期検査
  1. その他の生物学的製剤

最適な薬の選択ができるよう、医師と相談の上で対応可能です。

  • メポリズマブ(ヌーカラ®)
  • テゼペルマブ(テゼスパイアー®)
  • デペモキマブ(エキシデンサー®)