副鼻腔炎とは?
副鼻腔とは、鼻の周囲に左右合わせて8つ存在する空洞で、内部は粘膜で覆われています。これらは鼻腔とつながっており、吸い込んだ空気を温めたり加湿したりするほか、ほこりや異物を取り除くなど、呼吸を助ける重要な役割を担っています。
副鼻腔炎は、風邪などをきっかけに、ウイルスや細菌、真菌(カビ)といった病原体が副鼻腔の粘膜に感染し、炎症を起こすことで発症します。鼻腔の炎症が副鼻腔へ広がって起こることも少なくありません。
炎症によって副鼻腔の粘膜が腫れると、分泌物(鼻水や膿)がうまく排出されなくなり、鼻づまり、顔面の痛みや重だるさ、膿性の鼻水、悪臭を感じるなどの症状が現れます。
急性副鼻腔炎の場合、適切な治療を行えば多くは1~2週間程度で改善します。しかし、治療を途中で中断したり、症状を放置したりすると、炎症が長引き、12週間以上続くと「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」へ移行することがあります。
副鼻腔炎の症状は?
- 額や頬の奥、鼻の周囲に重だるさや圧迫感を感じる
- 黄色や黄緑色の、粘り気のある鼻水が出る
- 鼻の中に不快なにおい(悪臭)を感じる
- においが分かりにくくなる(嗅覚障害)
- 鼻水が鼻の奥から喉へ流れ落ちる感じがある(後鼻漏)
- 頭痛や目の奥の痛みを伴うことがある
- 鼻の中にポリープ(鼻茸)ができることがある
鼻茸(鼻ポリープ)とは?
鼻茸とは、鼻の粘膜にできる良性のふくらみ(ポリープ)です。慢性副鼻腔炎の経過中にみられることが多く、炎症が長く続くことで発生します。
鼻茸ができると、鼻づまりが強くなったり、副鼻腔内の換気や分泌物の排出が妨げられたりするため、副鼻腔炎が治りにくくなる原因となります。
多くの場合は、副鼻腔炎に対する適切な治療を行うことで改善が期待できますが、鼻茸が大きい場合や、薬物治療で十分な効果が得られない場合には、手術による切除が必要となることもあります。
副鼻腔炎の原因は?
副鼻腔炎の多くは、風邪をきっかけとしたウイルスや細菌感染によって発症します。
体力の低下や疲労などにより免疫力が低下している場合には、真菌(カビ)が原因となることもあります。
また、アレルギー性鼻炎による鼻粘膜の腫れや、虫歯・歯周病など歯の炎症が副鼻腔へ広がることで発症するケースもみられます。
急性副鼻腔炎の症状が12週間以上続く場合は、「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」と診断されます。慢性化すると治療に時間がかかることがあるため、症状が長引く場合は早めの受診が大切です。
子どもの副鼻腔炎とは?
子どもの副鼻腔炎は、鼻づまりが続くことで酸素を十分に取り込みにくくなり、口呼吸になりやすいという特徴があります。その結果、集中力や学習意欲、運動能力に影響が出ることがあります。
また、副鼻腔炎を繰り返すことで風邪をひきやすくなり、滲出性中耳炎を合併して症状が長引くこともあります。
一般的には、10歳前後を過ぎると自然に改善するケースも多いとされていますが、成長期の健康や生活習慣の形成に関わるため、症状がある場合には適切な治療を行うことが大切です。
治療は薬物療法が基本となりますが、症状が強い場合や鼻茸(ポリープ)の合併、ほかの疾患を伴う場合には、手術を検討することがあります。手術は内視鏡を用いた低侵襲な方法で行い、骨の成長への影響を考慮し、通常は骨成長期以降に実施します。
手術後も、再発の有無を確認するため、数年間にわたり慎重に経過観察を行います。
特殊な副鼻腔炎とは?
副鼻腔真菌症
副鼻腔の内部は湿度が高く、真菌(カビ)が繁殖しやすい環境です。副鼻腔真菌症は、真菌が副鼻腔内で増殖し、チーズ状の塊(真菌塊)を形成する疾患です。特に、片側の上顎洞や蝶形骨洞に発生することが多いとされています。
主な症状として、膿のような鼻水、鼻の奥から喉へ流れる後鼻漏、頬や目の奥の痛みなどがみられますが、症状がほとんどないまま経過することもあります。
治療の基本は、内視鏡を用いた手術によって真菌塊を取り除くことです。ただし、症状が軽い場合や年齢、全身状態などを考慮し、経過観察を行うこともあります。
歯性上顎洞炎
歯性副鼻腔炎とは、虫歯や歯の根の炎症が上顎洞(じょうがくどう)へ広がることで起こる副鼻腔炎です。近年では、インプラント治療に関連して発症するケースもみられます。
副鼻腔炎全体の約10%を占めるとされ、片側だけに膿性の鼻水や後鼻漏、頬の痛みなどの症状が現れるのが特徴です。
治療にあたっては、副鼻腔炎に対する治療だけでなく、原因となっている歯の治療を同時に行うことが重要です。歯科との連携により、症状の改善と再発予防を目指します。
副鼻腔嚢胞
副鼻腔嚢胞とは、副鼻腔の中に「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる袋状の構造ができ、その内部にさらさらした鼻水や、場合によっては粘り気のある膿がたまる疾患です。
嚢胞が大きくなると、周囲の骨を圧迫して薄くしたり、頬の痛みや違和感、まれに顔の変形を引き起こすことがあります。過去に歯ぐきの手術を受けたことがある方に多くみられる傾向があります。
治療の基本は、内視鏡を用いて嚢胞を開放し、内部にたまった液体を取り除く手術です。低侵襲な方法で行い、症状の改善と再発予防を目指します。
副鼻腔炎の検査・診断方法は?
診察では、問診に加えて内視鏡を用いて鼻腔内を詳しく確認します。粘膜の腫れや炎症の程度、鼻茸(ポリープ)の有無、ほかの疾患が隠れていないかを慎重に観察します。
必要に応じて、副鼻腔CT検査を行い、副鼻腔の状態や周囲の骨の構造を詳しく調べます。また、細菌培養検査により、感染の原因となっている菌を特定することもあります。
症状や経過によっては、血液検査などを追加し、炎症の程度や病気のタイプ、重症度を総合的に評価したうえで診断します。
副鼻腔炎の治療方法は?
副鼻腔炎の治療は、急性か慢性かによって方針が異なります。
急性副鼻腔炎の場合は、なるべく身体への負担を抑えながら、確実に症状を改善する薬物治療が基本です。早めに適切な治療を行うことで、症状の悪化や慢性副鼻腔炎への移行を防ぐことができます。
慢性副鼻腔炎では、症状の改善や再発防止のために、薬物療法に加えて手術療法を検討することがあります。患者さんの症状や副鼻腔の状態に応じて、最適な治療方法を選択します。
急性副鼻腔炎の場合
急性副鼻腔炎の治療は、まず薬物療法が基本です。
具体的には、
- 抗菌薬の投与(細菌感染が疑われる場合)
- 粘膜の炎症を抑える点鼻薬
- たんの排出を助ける去痰剤
などを組み合わせて症状の改善を目指します。
さらに、鼻腔内の換気や排泄機能を高めるために、必要に応じて
- 副鼻腔吸引処置
- ネブライザーによる吸入治療
- 鼻洗浄(生理食塩水など)
といった補助的な治療を併用することがあります。これにより、薬物の効果を高め、回復を早めることが期待できます。
慢性副鼻腔炎の場合
保存療法(薬物療法)からの治療開始:副鼻腔炎の治療は、まず薬物療法から始めるのが基本です。特に、これまで治療歴がない方には、マクロライド系抗生物質を少量・長期間服用する方法が効果を示すことがあります。この治療は、細菌を直接除去することよりも、副鼻腔の粘膜の線毛運動を促進し、自浄作用を高めることを目的としています。
加えて、症状改善のために、鼻洗浄や正しい鼻のかみ方などの生活指導も行われます。日常でできるケアを組み合わせることで、治療効果を高め、再発を予防します。
手術が必要になる場合:保存療法だけでは十分な改善が得られない場合や、次のようなケースでは手術を検討することがあります。
- 副鼻腔炎がしばしば再発を繰り返す
- 巨大な鼻茸(ポリープ)がある
- 副鼻腔炎の原因となる高度な鼻中隔弯曲症がある
- 好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症など特殊な副鼻腔炎が疑われる
手術は内視鏡を用いた低侵襲な方法で行い、副鼻腔の換気や排泄機能を改善することで、症状の改善と再発予防を目指します。
当院の副鼻腔炎(蓄膿症)の
日帰り手術
保存療法で十分な改善が見られない場合には、内視鏡を用いた低侵襲な手術をご提案しております。当院では、出血や術後の痛み、腫れを最小限に抑えた日帰り手術が可能です。手術は、すべて日本鼻科学会認定鼻科手術指導医が慎重に丁寧に執刀します。
手術時間は病態や手術内容により異なりますが、おおよそ30分から2時間で行われます。対象年齢は骨成長期以降のおおむね16歳以上です。
手術前には、以下の検査を行い、副鼻腔炎の状態や全身の健康状態を確認します。
- 鼻内視鏡検査・副鼻腔CT・鼻腔通気度検査・嗅覚検査(副鼻腔炎の詳細評価)
- 胸部レントゲン・心電図・肺機能検査・血液検査・尿検査(基礎疾患や全身状態の確認)
手術後は、翌日から3~4日間は学業や仕事を控えていただきます。運動や飲酒などの生活制限は約2週間です。
経過観察は、手術翌日・1週間後・2週間後・1か月後・2か月後・3か月後と段階的に行い、その後は状態に応じて診察頻度を調整します。
安全に回復し、再発を防ぐため、しっかりとしたフォロー体制を整えています。
副鼻腔炎のESS(内視鏡下鼻・副鼻腔手術)
慢性副鼻腔炎は、お薬や点鼻などの保存的治療で改善することも多い病気ですが、症状がなかなか良くならない場合や、再発を繰り返す場合には、手術治療が有効となります。
当院では、そのような場合にESS(Endoscopic Sinus Surgery:内視鏡下鼻・副鼻腔手術)を行っています。ESSは、現在もっとも標準的で、安全性の高い副鼻腔手術のひとつです。
ESSとはどんな手術?
ESSは、鼻の中から細い内視鏡を入れて行う手術です。副鼻腔の中を高画質モニターに大きく映し出しながら、マイクロデブリッダーや専用の鉗子を用いて、炎症やポリープなどの病変部分のみを丁寧に取り除きます。必要に応じて副鼻腔内を洗浄し、鼻や副鼻腔の通りを良くすることで、換気や膿の排出がスムーズになる環境を整えます。
ESSの大きな特徴・メリット
- 正常な粘膜をできるだけ温存し、悪い部分だけを精密に治療
- 副鼻腔の隔壁を滑らかに整え、再発しにくい状態を目指す
- 口の中(歯ぐき)を切開する必要がありません
- モニターで拡大しながら操作するため、安全性が高い
- 術後の出血・痛み・しびれなどの負担を最小限に抑えられる
従来の手術に比べ、身体への負担が少なく、回復が早いのもESSの特長です。
当院のESSについて
当院では、ESSを日帰り手術として行っています。「仕事や家庭の都合で長期入院が難しい」という方にも配慮した治療が可能です。
また、
- 遠方にお住まいの方
- 術後の経過がご心配な方
については、提携病院での入院による経過観察にも対応していますので、ご安心ください。
ESSの種類
鼻茸切除術
内視鏡を用いて鼻茸(はなたけ)を切除する手術です。局所麻酔下、または静脈内鎮静法を併用して実施し、内視鏡で鼻腔内を確認しながら鼻茸を切除します。本手術は、鼻茸によって生じている鼻閉などの症状の緩和や、鼻茸の病理検査による診断を目的として行われます。手術の内容、所要時間、術後経過には個人差があります。
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅰ型 (副鼻腔自然口開窓術)
副鼻腔炎を繰り返す症状を有する患者に対して行う、内視鏡を用いた手術です。局所麻酔下、または静脈内鎮静法を併用して実施します。内視鏡下に鼻ポリープの切除や、副鼻腔の自然口の開大を行います。本手術では、副鼻腔内の操作は原則として行いません。
手術の内容、所要時間、術後経過には個人差があります。
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型 (副鼻腔単洞手術)
1つの副鼻腔に炎症を認める場合に行う、内視鏡を用いた手術です。膿性鼻汁、鼻閉、顔面痛などの症状を有する副鼻腔疾患を対象とします。局所麻酔下、または静脈内鎮静法で実施することもありますが、副鼻腔内の操作を伴うため、原則として全身麻酔下で行います。内視鏡下に病変を有する副鼻腔の自然口を開大し、必要に応じて鼻ポリープの切除を行うとともに、副鼻腔内に貯留した膿などの炎症性貯留物の除去、吸引および洗浄を行います。本手術は、副鼻腔の換気および排泄を目的として行われます。
手術の内容、所要時間、術後経過には個人差があります。
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型 (選択的(複数洞)副鼻腔手術)
上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞などの副鼻腔のうち、2つ以上の副鼻腔に病変を認める場合に行う、内視鏡を用いた手術です。本手術は、原則として全身麻酔下で実施します。内視鏡下に鼻ポリープの切除を行うとともに、副鼻腔の自然口を開大します。さらに、副鼻腔内に貯留した膿などの炎症性貯留物の除去、吸引および洗浄を行い、必要に応じて副鼻腔の隔壁を除去し、副鼻腔を単洞化します。
手術の内容や鼻腔内の手術時間は、病変の範囲や状態により異なります。
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型 (汎副鼻腔手術)
上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞を含むすべての副鼻腔に病変を認める場合に行う、内視鏡を用いた手術です。本手術は、原則として全身麻酔下で実施します。
内視鏡下に鼻ポリープの切除を行うとともに、各副鼻腔の自然口を開大します。さらに、副鼻腔内に貯留した膿などの炎症性貯留物の除去、吸引および洗浄を行い、必要に応じて副鼻腔の隔壁を除去し、副鼻腔を単洞化します。本手術は、副鼻腔全体の換気および排泄を目的として行われます。
手術の内容、所要時間、術後経過には個人差があります。
ESS(内視鏡下副鼻腔手術)の術後
術後の再発を防ぐためには、継続的な経過観察と適切な処置が欠かせません。当院では、手術後翌日、1週間後、2週間後、1ヶ月後の通院をお願いしており、状況により受診回数は増減します。その後は2ヶ月目に月2回、3ヶ月以降は月1回の頻度で診察を行います。少なくとも6ヶ月から1年間は定期的なフォローアップが推奨されます。
診察時には、かさぶた(痂皮)の除去や鼻吸引、吸入などの処置を行い、必要に応じて薬を処方します。ポリープが再発した場合も、外来での切除対応が可能です。
内視鏡下鼻中隔矯正術・下鼻甲介切除術
副鼻腔炎の再発や慢性化に、鼻中隔の歪みや下鼻甲介(かびこうかい)の骨構造が関与している場合には、内視鏡下鼻中隔矯正術や下鼻甲介切除術を行い、鼻の空気の通り道を整えます。
これらの手術は、内視鏡を用いて鼻の中から行うため、鼻の形に変化が出たり、顔に傷が残ることはありません。出血量も少なく、身体への負担が比較的軽い手術です。
当院では、これらの手術を日帰り手術として実施しています。遠方にお住まいで術後の経過に不安がある方については、提携する病院での経過観察入院にも対応可能です。
副鼻腔炎(蓄膿症)の
術後の注意点は?
- 手術当日は出血しやすいため、鼻をかむことや鼻をすすること、重たい物を持つこと、頭が下がる姿勢、いきむ・力む行動は避け、できるだけ安静にしてお過ごしください。
- シャワーは翌日から可能、入浴は翌々日から可能となりますが、必ず医師の指示に従い、基本的に短時間で行ってください。出血がみられる場合は控えてください。
- 手術後数日間(目安として約5日間)は、止血や創部保護のために留置する充填物や鼻粘膜の腫れの影響により、強い鼻閉を感じる場合があります。また、術後およそ1~2週間程度は、腫れや出血、鼻水などの分泌物の影響により、鼻がじゅるじゅるした感じが続くことがあります。
- 鼻の通りは、2~3週間程度を目安に徐々に改善しますが、鼻洗浄を行う際に、鼻腔内の充填物が移動することで一時的に鼻閉が強く感じられる場合があります。症状が長く続く場合や気になる症状がある場合には、当院へご連絡ください。
- 鼻の粘膜が、内視鏡検査やCT検査において安定した状態となるまでには、目安として2~3か月程度を要する場合があります。そのため、この期間は比較的短い間隔での定期通院が必要となります。
- 術後約2か月間は、手術創部からの鼻出血が起こりやすい時期とされています。この期間は、激しい運動、飲酒、喫煙は控えてください。出血が続く場合や量が多い場合には、速やかに当院へご連絡ください。
副鼻腔炎の手術費用
| 術名 | 保険点数 | 3割負担 |
|---|---|---|
| 内視鏡下鼻・副鼻腔手術I型(片側) | 3,600点 | 10,800円 |
| 内視鏡下鼻・副鼻腔手術II型(片側) | 12,000点 | 36,000円 |
| 内視鏡下鼻・副鼻腔手術III型(片側) | 24,910点 | 74,730円 |
| 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型(片側) | 32,080点 | 96,240円 |
| 鼻茸摘出術 | 1,090点 | 3,270円 |
※上記費用に加え、診察料や薬剤料、処方料などがかかります。